佐久間まゆ「運命を辿って」

31pt   2019-04-15 20:00
SSなび

1: ◆8dLnQgHb2qlg 2016/10/29(土) 17:30:18.04 ID:QJ59XVf90
 季節は春。入学式を目前に控えた休日に、私は椅子に座って高層ビル群を眺めていた。
 どこまでもコンクリートが広がる街並みを見ると、遠くに来たと実感する。
 東京に越してきて、寮に入ってからまだ数日しか経っていない。
 この街と、個性豊かな寮の住人に慣れるにはまだ少しかかりそうだ。

 微かに聞こえる足音に、視線を室内に戻す。
 部屋の中は最低限の備品しか置かれていない。どこにでもある小さな会議室だ。
 このプロダクションに来るのは二回目だが、こういう部屋だからこそ特に緊張を感じることもなかったのだろう。
 その瞬間が目前に迫りながらも、心拍に乱れはなかった。

「失礼します」

 ノックに続いて、低く落ち着いた声が聞こえてきた。一拍置いてドアが開かれる。

「申し訳ありません、お待たせしました」

「いいえ。私が早く着きすぎただけですから」

 会議室に入ってきた男性に立ち上がって返事をする。
 慣れない電車での移動のため30分は余裕をもって近くまで来ていた。
 待ち合わせまで時間を潰せる場所を探していたところで、このプロダクションの人に捕まってしまったのは誤算だった。

「初めまして、佐久間まゆです。貴方が私のプロデューサーさんですか?」

「はい。これから佐久間さんを担当いたします。不慣れな部分もありますが、よろしくお願いします」

「こちらこそ。私はアイドルのことはあまりよくわかりませんから」

 軽く挨拶を交わしながらこちらに近づいてきた。

「どうぞ、座ってください」

 机に向かい合うようにして座ると、 プロデューサーさんは鞄から資料を取り出し始めた。


SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1477729817
   SSまとめアンテナトップページへ
SSの話題が沢山。