勇者「は?お前城下町に攻撃仕掛けたりしてたろ!あれが侵略行為じゃなくてなんだよ!」
魔王「あの攻撃で人間の死傷者はいない」
勇者「それは俺達がたまたまそこにいたから……!」
魔王「違う。あの攻撃で魔族は人間を傷つけられない。そう命令した」
勇者「確かにあの攻撃で出た被害は食料や金銭などの物資だけだった……」
勇者「……それでも、人を攻撃するのはダメだ」
魔王「ならば魔族は攻撃されてもよいと言うのか」
勇者「それは……ダメなことだ。理由がない限り」
魔王「魔族は見つかれば理由無く攻撃され、住処を追われて殺される。我らが望むのは生活のみであるというのに」
7: 以下、\(^o^)/でVIPがお送りします 2014/12/10 01:22:35.21 ID:+oNpqfm+0.net 勇者「……なら、お前はどうして101人目までの勇者を殺したんだ」魔王「正当な防衛行動だ。貴様らの法が言うところのな」
勇者「……攻撃されたから、やり返した」
魔王「違う。殺されそうになったから、殺したのだ」
勇者「今俺が生きているのも……」
魔王「そうだ。お前はまだ私に攻撃していないからだ」
勇者「魔王、お前は勇者を城に招き何をするつもりなんだ」
8: 以下、\(^o^)/でVIPがお送りします 2014/12/10 01:26:05.80 ID:+oNpqfm+0.net 魔王「謝罪をしたいのだ。それと和解を」勇者「謝罪?」
魔王「生きるためとはいえ、我々がとった行動は許されるものではない」
勇者「そうだ。それが人であれ魔族であれ、お前たちはやってはいけないことをした」
魔王「我々魔族は、ただ和解したいのだ。そして、国を持つことを人間の王に許してほしい」
勇者「国だって?そうやって戦争でもする気なのか?」
魔王「国を持てば、我々が奪った物を返すこともできる。国ではなく自治権でもいいのだ」
10: 以下、\(^o^)/でVIPがお送りします 2014/12/10 01:32:27.26 ID:+oNpqfm+0.net 勇者「……ダメだ。信用できない」魔王「仕方あるまい……。ならば戦うのか」
勇者「いや。お前を見極める」
魔王「……ほう。どのようにしてだ」
勇者「お前の側で、お前自身の振る舞いを見てだ」
魔王「……よかろう。しかし襲おうなどと考えるな」
勇者「……そっちもな」
12: 以下、\(^o^)/でVIPがお送りします 2014/12/10 01:36:42.63 ID:+oNpqfm+0.net 魔王(ククククク……勇者というのは根が真っ直ぐな分、こういった話に弱いのだ……)魔王「101人目も……この話を受けてくれた。しかしその晩に私を襲い、返り討ちだ」
勇者「俺はそうはならない。お前を襲うこともしないし、お前に襲われもしない」
魔王(これで寝込みを襲ってやれば……!)
14: 以下、\(^o^)/でVIPがお送りします 2014/12/10 01:41:15.08 ID:+oNpqfm+0.net 勇者「俺はどこで生活すればいい」魔王「ああ、好きな部屋を選べ。私の部屋以外はどうせ空いている」
勇者(魔王の奸計に引っかかるわけなどない。卑怯なようで気が引けるが、やはり隙を見て魔王を倒す……)
勇者「なら外でテントを張ろう。外に仲間を待たせてある」
魔王(ちっ、勇者の居所を把握しづらくなったな……。まあいい、ゆっくり時間をかけて……)
魔王「わかった。外の廃墟も自由に使え」
16: 以下、\(^o^)/でVIPがお送りします 2014/12/10 01:50:51.21 ID:+oNpqfm+0.net 翌朝魔族A「魔王様、城下郊外の魔族が8名処刑されたとの報告があります」
魔王「これで……残りの魔族は66名となったのだな……」
魔族A「はい……我々もやはり人への攻撃を……」
魔王「そうすれば人類との和解はなくなる。たえるのだ。そこの勇者も和解を望んでいる……」
勇者(魔王には隙が見当たらない…………部下もひっきりなしにやってくるし、正直ジリ貧になるな……)
魔族A「はっ。城下のような事件は二度と起こさないよう、部下に周知させます」
勇者(城下の事件?あの集団略奪のことか?)
魔王「ああ。我々の和平の為に……」
17: 以下、\(^o^)/でVIPがお送りします 2014/12/10 01:57:37.59 ID:+oNpqfm+0.net 勇者「城下の事件とは何だ」魔王「貴様も知っているだろう。この前の城下攻撃のことだ」
勇者「……事件と言っていたな。さっきの魔族は」
魔王「違う。あれは私が命じたことだ。城下に展開した部隊に命令した。飢えを満たすために食料を奪えと」
勇者(どこまでが嘘なんだ……クソッ、嘘とはいえ見極めるなんて言いながら、全くわからない)
魔王(和平のために、か。…………和平が来ればどうなるのか……考えたことなどなかったな……)
勇者「魔王。質問がある」
魔王「内容次第だな」
18: 以下、\(^o^)/でVIPがお送りします 2014/12/10 02:04:44.55 ID:+oNpqfm+0.net 勇者「貴様は人を殺さないというような言い方をしているが、ならば10年前の大虐殺は何だ?」魔王「あれは、復讐だ。貴様ら人類への」
勇者「魔族戦争の報復か……」
魔王「10万を超える民が人類に虐殺された。我々は降伏していたというのに、貴様らが先代魔王の首を落とし、丁寧にもこの城の前に捨てたのだ」
勇者「だからあの10人を殺したのか。殺して満足したのか!」
魔王「まだ、殺し足りないさ。しかし、我が臣下達は安寧を求めている……」
魔王(和平……。実現すれば、臣下達は笑えるのだろうか……)
19: 以下、\(^o^)/でVIPがお送りします 2014/12/10 02:10:02.07 ID:+oNpqfm+0.net 勇者「お前自身はどうなんだ」魔王「まだ殺し足りぬ。殺したい!命を求めている!」ゴゴゴゴ……
勇者「……貴様」
魔王「しかし、いや、だからか。私は襲い来るもの以外を殺さぬと決めた」
魔王(……何故?命を欲するなら全て殺せばいい。私ならできるのに、何故しない……?)
勇者「臣下の望みを認めるから、必要以上には殺さないと」
魔王「ああ。そうだ」
魔王(考えるのはやめよう。今晩、この勇者を殺して終える……。和平など実現しない……わかりきっている)
20: 以下、\(^o^)/でVIPがお送りします 2014/12/10 02:15:10.74 ID:+oNpqfm+0.net 勇者(この魔王、迷っている……。魔王として生きるのか、王として臣下の生活を守るのか……)魔王「魔族戦争の復讐は続いている。しかし臣下を思えば和平の道を探りたい。私は……」
勇者(勇者の勤めは……そう、救うことだ。この魔王でさえ例外ではない……!)
魔王(今晩で終わる。終わらせる。魔王として生きる。人を全て……)
勇者(本当に長かったこの戦いを)
魔王(本当に長かったこの復讐を)
勇者・魔王(終わらせる……!!)
28: 以下、\(^o^)/でVIPがお送りします 2014/12/10 02:24:22.53 ID:+oNpqfm+0.net その夜魔王(勇者の居所はわからない……。だが魔族と違って睡眠をとらなければならないはずだ)
魔王「殺す。勇者、殺す。復讐だ。いつまでも復讐をする。人類が滅ぶまでだ……」
魔王(長かった迷いだった。いや、まだ迷っている。だが決めた。人類は殺す)
魔王「殺す……」
魔王(思い出の中の臣下達、民たちが笑っている……。辛かったあの日々は、決して辛いことだけではなかった……)
魔王「だけど決めてしまった……。終わらせる。終わらせる……。復讐を」
29: 以下、\(^o^)/でVIPがお送りします 2014/12/10 02:30:02.73 ID:+oNpqfm+0.net 魔王の回想魔王「あり得ぬ。我らの民に!我が父に!命を捧げねば怒りが収まらん!」
臣下B「我々とて同じ気持ちです……!魔王様!」
魔王「魔王……。そうか、私はすでに王となったのだな……」
臣下A「先代のことは私も苦しい……しかし魔王様……。残された民の幸せを……どうか……」
魔王「わかった……。しかし、今から辛いのはお前たちになるのだぞ……」
臣下B「我々は辛くとも構いません。民の暮らしを守るのが王と臣の役割です」
魔王「では……和平に向けて動くとしよう……」
30: 以下、\(^o^)/でVIPがお送りします 2014/12/10 02:33:32.81 ID:+oNpqfm+0.net 魔王の回想2魔王「本当か!よくやった……!!」
臣下B「このことを国民に向けて周知しましょう!」
魔王「そのことは臣下B任せる。臣下Aよ。我々が人類に対して要求できることの整理をしよう。交渉できるカードを増やすのだ」
臣下A「はいっ!」
31: 以下、\(^o^)/でVIPがお送りします 2014/12/10 02:39:07.92 ID:+oNpqfm+0.net 魔王の回想3人の王「…………ふむ。国を持てば力を持つ。戦争が起きれば貴様らが悪となるぞ」
魔王「我々は防衛のみを司る軍事力のみを保有します。これは先ほどの条約の通りです」
人の王「ならば、よかろう。後ほど日を改めて調停を行うとしよう」
魔王「ありがとうございます!日にちは……」
32: 以下、\(^o^)/でVIPがお送りします 2014/12/10 02:44:07.87 ID:+oNpqfm+0.net 魔王の回想4国民「ワァァァァァ!!!!」
臣下A「先代魔王様……。私たちは、ついに……」
魔王「我々の領土、我々の文化、我々の暮らしを手に入れられる!人から隠れて生きる時はなくなる!」
魔王(復讐は、もうやめよう。国民の顔を見てみれば、和平がいかに崇高ですばらしいものか、私にもよくわかった……)
33: 以下、\(^o^)/でVIPがお送りします 2014/12/10 02:48:53.77 ID:+oNpqfm+0.net 魔王の回想5魔王「……魔族は今、魔王城前の広場に集まって、私の帰りを待っているでしょう」
人の王「先代のようにはならないようにしなければな」
魔王「……はい。では、こちらに名前を……」
人の王「否、だ。魔族の居場所が聞けたのだから、勇者に向かわせるまでよ」
魔王「何を!?」
人の王「魔族は魔王城前に集まり、人類への反撃の準備をしている。人類はそう考えている」
魔王「違います!私たちは!」
人の王「違わんのだよ。魔王。貴様はここで私を殺そうとして返り討ちに遭い、そして魔族は人類の敵となる」
37: 以下、\(^o^)/でVIPがお送りします 2014/12/10 03:00:30.19 ID:+oNpqfm+0.net 魔王「クソッ!」ダッ人の王「この書類に名前を書かなくてよいのか?和平調停はこの書類にて締結される。貴様がここから去れば、和平はなかったことになるぞ」
魔王「……書いて、すぐに帰らせていただく……!」
人の王「それがいい。どのみち貴様の民は勇者に殺されるのだから」
魔王「和平……こんなのが和平であってたまるか……」
魔王(ここから魔王城まで馬を走らせれば何時間もかからない……。すぐに帰れば助けられる……!)
38: 以下、\(^o^)/でVIPがお送りします 2014/12/10 03:09:26.31 ID:+oNpqfm+0.net (現魔王の回想)魔王「クソッ……そこをどけ!」マホウッポイノー
衛兵「ぐわぁぁぁぁ!」
魔王「生きてはいるだろう。他の誰かがもうすぐ来る。助けてもらえ」ダッ
魔王(民は無事か……間に合え……)
~魔王城前の広場~
1番目の勇者「よぉ。魔王か?」
魔王「私の民はどうなった」
1番目の勇者「殺したよ。まだ条約は有効じゃない。殺したところで条約に抵触はしない」
魔王「そのようなことを聞いているのではない。私の民は、国はどうなったのだ!」
1番目の勇者「人々が魔族に困ってる。なら魔族を根絶やしにするのが一番速い解決だ。だから殺したさ。お前の国は、お前だけのものになった」
魔王「…………和平を夢見た民が……臣下が……なぜ殺された……」
1番目の勇者「人々の救いになるからだ。勇者の仕事は救うことなんでね」
39: 以下、\(^o^)/でVIPがお送りします 2014/12/10 03:16:00.98 ID:+oNpqfm+0.net 魔王「ガ……」1番目の勇者「残った魔族はあんただけだ。だからこれで……終わりだっ!」ブンッ
魔王「ガァァァァァァァァァァアアアアアアアアアアアアアアアア!!!」
1番目の勇者「えっ……おい……腕……無くなって……え?」
魔王「フゥー……!フゥー……ッッ!」
1番目の勇者「剣……腕と一緒に……死……」
魔王「シャァッ!」ヒュンッ
1番目の勇者「ぁ」
40: 以下、\(^o^)/でVIPがお送りします 2014/12/10 03:22:39.95 ID:+oNpqfm+0.net それからのことはよく覚えていない。2番目の勇者「魔王!覚悟!」
魔王「ガアッ!」
2番目の勇者「ぐぅっ……パパ……あたし、だめだった……よ……」
あの和平が実っていればどうなっただろう?
そんなことすら考えられなかった。
あの日から1年経って尚赤々と染まった、王城前の広場。
民や臣下の無念が見えるそこを眺め、涙を流し、勇者を殺す。
私の心も無念に支配されていた。
人類に対する憎しみだけを持って生きる。しかし、自ら人類を襲うことはしなかった。
防衛のみを行い、その防衛で勇者の命を奪う。
虚しい日々であった。
17番目の勇者「魔王、お前の目的はなんだ!」
魔王「知れたことを。復讐だ……」
17番目の勇者「そのために今までの勇者を……!許さん!食らえ!」
魔王「…………」シュッ
17番目の勇者「うっ……」バタン
44: 以下、\(^o^)/でVIPがお送りします 2014/12/10 03:44:18.22 ID:+oNpqfm+0.net 30番目の勇者を殺した頃から、私の下に生き残った魔族達が集まりだした。臣下A「魔王様……人類は……敵でございました」
魔王「ああ……そうだ。人類は……敵だった」
私達は城の中で静かに暮らすと決めた。
魔族は食べずとも1年は生きられる。
食に困れば近くの街に出向き、頭を下げた。
こうすれば少しは食料が貰えたからだ。
39番目の勇者「貴様、街の食料を奪うだけが目的か!」
魔王「目的は、復讐だ……」
39番目の勇者「今までの勇者達の思い、受けろぉぉ!」
勇者は毎度同じようなことを言う。
やってることは私と変わらないというのに、どうして人は勇者を英雄視するのだろう?
人の家に無断で上がり、物を略奪するなど魔族でもするまい。
行いは私達とほぼ変わらないというのに……。
61番目の勇者「何も言うな。魔王。すぐに楽にして……やるっ!」ダッ
魔王「……」フッ
61番目の勇者「ぐ……」バタリ
しかし、民を失った悲しみと怒りはまだ私の中にある。
復讐をする気持ちと、残された民の幸せを祈る気持ち……。
考えれば、どちらが大切かなど明白だったのだ。
魔王「和平など……」
臣下Aは何も言わない。何も言えない骸になった。
90人目の勇者とほぼ同時に攻めてきた91人目の勇者が、我が最良の臣を奪っていった。
91人目の勇者「部下がその程度なら魔王も知れてるってもんだ、なっ!」ブンッ
魔王「…………貴様!」ファイガ
91人目の勇者「う、そ……」
50: 以下、\(^o^)/でVIPがお送りします 2014/12/10 04:18:57.37 ID:+oNpqfm+0.net 101人目の勇者を殺した。こう言って私の前に立ったのはこの勇者が最初だった。
102人目の勇者「貴様がまだ世界に混乱をもたらし続けるのなら、俺は貴様を倒し、世界を救う」
話がしたいと言っていたな……。
なら、最後の勇者にくらい、話をしてやるとしよう……。
勇者「zzz……」
魔王(臣下達よ、民達よ。今人類の命をお前たちに捧げる……)
勇者「……zzz…………zzz……」
魔王(寝てる勇者を殺す……それだけで……。始まる……復讐……)
勇者「……zzz…………」
魔王「……………………」フッ
魔王(後は、振り下ろす……だけ)
魔王「………………………………………………………………………………………………」
勇者「……………………」
54: 以下、\(^o^)/でVIPがお送りします 2014/12/10 04:36:00.30 ID:+oNpqfm+0.net 勇者「……………………殺さないのか、魔王」魔王「…………殺す。勇者は……人間は……」
勇者「何がお前を迷わせるんだ。お前は魔王だろう。人類を滅ぼすものだ」
魔王「……迷ってなどいない」
勇者「その短刀を振り下ろせば俺は死ぬ。それでいいんじゃないのか?」
魔王「ああ……それで、いいんだ」
勇者「なら、振り下ろせ。俺は勇者だ。救うことが勤めだ。それでお前の迷いが晴れるなら、俺はお前に殺されよう」
魔王「…………」
56: 以下、\(^o^)/でVIPがお送りします 2014/12/10 04:44:10.77 ID:+oNpqfm+0.net 魔王の握った短刀が、ゆっくりと動き出す。魔法使い「辛そうだったから……。見ていて、辛いくらい……」
魔王「ならなぜ抱きしめる」
魔法使い「暖かくなれば……いいかなって……」
魔王「……ふざけたことを…………」
勇者「…………魔王」
魔王「お前は、殺す。勇者よ」
勇者「ああ。お前のために俺は殺される」
魔王「だが……それは今じゃない……。帰れ」
勇者「……それでいいのか。お前の悲しみと怒りは……それで……」
魔王「お前」
魔法使い「え?」
魔王「私は、大切な物を失わずに済んだ。お前のおかげだ。礼を言う」
魔法使い「……よくわかんないけど、うん」
勇者「魔法使い、ありがとう。今は、王城に戻ろう。このことを報告するんだ」
62: 以下、\(^o^)/でVIPがお送りします 2014/12/10 05:21:36.57 ID:+oNpqfm+0.net 勇者と城に帰って、すぐに王様へ報告した。魔王「いや……。お前は私のために最大限やっているだろう。謝るな」
勇者「なら、魔王。俺をあの時殺さないでいてくれてありがとう」
魔王「あの魔法使いに言うのだな……」
勇者「その彼女が言うんだ。決めたのは魔王自身だって」
魔王「……その魔法使いはどこにいる?」
勇者「外だ。外の城下町は彼女の母が生まれた町らしい」
魔王「なら、彼女の母は魔族なのか?」
勇者「いや、彼女は人間と魔族のクォーターだ。母親はハーフだったらしい」
魔王「……彼女も、魔族に翻弄された一人なのだな」
勇者「ああ。旅立つ前は魔族への怒りが強かったよ」
魔法使い「ちょっ……ハァハァ……来た!」
勇者「ん?何が?」
魔法使い「王様の軍隊!」
67: 以下、\(^o^)/でVIPがお送りします 2014/12/10 05:53:07.36 ID:+oNpqfm+0.net 勇者「……軍隊かと思ったけど……女の人や子供もいる……」部隊長「貴様が魔王か」
魔王「ああ。私を殺しにでも来たのか」
部隊長「いや。違う」
勇者・魔法使い「え?」
部隊長「私は……魔族との和平を求めている」
魔王「……だからどうした」
部隊長「私達の王は……魔族を嫌っている。この付近ではほとんど見られなくなった魔族に、未だに憎しみを隠せないでいるんだ」
魔王「……それで、お前は私に何を言いたいんだ」
部隊長「私、いや私達は……国を抜けてきた。あの国で、理不尽な差別政策や陰謀に付き合うのはゴメンだ」
魔王「で、この廃墟で暮らしたいと?はっ、好きにするがいい。元々貴様らが占拠した土地だろう」
部隊長「いや。この国は魔族の国だ。和平条約にはそうある」
魔王「和平条約だと?あの条約は事実上無効になっている」
部隊長「いや、そうじゃない。条約は生きている。条約を違反しているのは我ら人類の方だったんだ」
68: 以下、\(^o^)/でVIPがお送りします 2014/12/10 05:57:21.56 ID:+oNpqfm+0.net 魔王「履行されていない条約など、生きているとは言えまい」勇者「あ!」
魔王「なんだ」
勇者「履行されていない条約など、生きているとは言えまい……。履行されていないなら死んでるけど、履行されてるなら……」
魔法使い「……!!そうだ!生きてるよこの条約!」
魔王「何を言っている。貴様らまで」
部隊長「いや。生きてるよ。そして、この条約は履行されている。今この時でさえ」
70: 以下、\(^o^)/でVIPがお送りします 2014/12/10 06:05:07.81 ID:+oNpqfm+0.net 勇者「魔王。お前はこの条約を破ったことがないんだ」魔王「……そんなはずがない。私は人間を何度も殺している」
勇者「いや、魔王。お前のことだ、全て正当な防衛、もしくは反撃のはずだ」
魔王「…………証明できまい」
魔法使い「確かに物的に証明はできない……。でも、あなたの民達は?生き残った僅かな民達は、今もその条約を守ってる」
魔王「……そうか」
部隊長「条約が有効になってから今まで、魔族が関わった事件全てで人間は死んでない。怪我をした人間もごくごく僅かだ」
勇者「魔王。条約っていうのは守られて初めて価値がある。そして、条約に基づいた取り決めも、条約を守ってさえいれば有効だ」
魔法使い「ということは……、ここ、魔族の国?」
部隊長「魔族が条約を守り、条約に取り決められたものが確かなら、ここは魔族の国だ」
71: 以下、\(^o^)/でVIPがお送りします 2014/12/10 06:14:16.37 ID:+oNpqfm+0.net 魔王「……私は」勇者「ああ。お前は守っていた。国を。民の意志を」
魔王「お前たち……私は……守れていたのか……」
勇者「泣いているのか、魔王」
魔王「涙は流さぬ。私は、守り続けねばならんのだ」
部隊長「……その国に、私達を住まわせてもらいたい」
魔王「……よかろう。気付かせてくれた礼だ。廃墟しかないが、好きに使え」
部隊長「感謝する。この国の発展のために尽力するよ」
魔王「…………」
72: 以下、\(^o^)/でVIPがお送りします 2014/12/10 06:18:18.16 ID:+oNpqfm+0.net 翌日男A「どうした!」
女A「資材が落ちてきて……怪我はないけど動けないの!」
男A「くそっ!待ってろ!助けを呼んでくる!」
魔王城・魔王の部屋
魔王「…………」
女A「え……ひっ……」
魔王「この資材が邪魔なのだな……」フンッ
女A「……あ、ありがとうございます……」
魔王「…………民の生活か……」
女A「………………あ、あの……」
魔王「なんだ。礼は聞いた。できることをしたまでだ」
女A「あの、殺さない……んですか…………?」
魔王「私は……王だ。民を殺す王などどこにいる」
女A「…………」
魔王「ではな」
75: 以下、\(^o^)/でVIPがお送りします 2014/12/10 06:26:26.82 ID:+oNpqfm+0.net 魔王「町に民がいるというだけで、こうまで明るくなるものなのか……」勇者「魔王、どうした」
魔王「いや。少しな。お前は何をしている」
勇者「町の人が少しでも住みやすくなるように色々手伝ってた。お前もどうだ?」
魔王「…………いや。客がきた。少し席を外すことにする」
勇者「ん?客……?」
77: 以下、\(^o^)/でVIPがお送りします 2014/12/10 06:34:40.41 ID:+oNpqfm+0.net 魔王城・ホール臣下C「はっ。魔王様」
魔王「今までどこにいたのだ?」
臣下C「先月までは北の漁師町近くの森に……それからはこちらへ向けて移動しておりました」
魔王「よく生きていてくれた……」
臣下C「魔王様……私のような者にそんな……」
魔王「……貴様、私に嘘が押し通ると思ってるのか?」
臣下C「えっ……!」
魔王「貴様は私と二人になってから姿を表した。勇者と二人の時には現れることもなく」
臣下C「お、お話の邪魔をしてはならないと思いまして……」
魔王「人の王に遣わされて来たのだろう?要件を言え」
78: 以下、\(^o^)/でVIPがお送りします 2014/12/10 06:41:21.61 ID:+oNpqfm+0.net 臣下C「……では申し上げます。魔王様。私は今、屈辱ながら人の王の下で間者をさせていただいております」魔王「貴様は隠密能力に長ける。間者には向いていような」
臣下C「人の王は私に言いました。我が軍隊が魔王城近くの廃墟へ亡命したと」
魔王「ああ。確かに来た」
臣下C「その軍隊の返却要請を伝えに参りました。魔王様。どうかお願い申し上げます」
魔王「……彼らに相談しよう」
79: 以下、\(^o^)/でVIPがお送りします 2014/12/10 06:51:45.46 ID:+oNpqfm+0.net 魔王「……というわけだ。貴様らは王に従う気などありはしないのだろう?」部隊長「ああ。みんなそのように言っている」
魔王「……わかった。私が何とかしよう」
部隊長「しかし、申し訳が立たない!匿ってもらったばかりか、そんなこと」
魔王「国を求める民がある。ならば守るのが王の勤めだ……」
部隊長「……しかし!」
勇者「……魔王。策はあるのか?」
魔王「ある。なければこのようなことは言わぬ」
部隊長「……あなたは、私の知る王とはずいぶん違うんだな」
83: 以下、\(^o^)/でVIPがお送りします 2014/12/10 07:02:47.76 ID:+oNpqfm+0.net 魔王城・会談の席魔王「ああ。わかっている」
参謀「ではこちらの要求を伝える。亡命した我が国民を返却せよ」
魔王「彼らにその意志があればな」
参謀「はっ、ないはずなかろう。魔族の国など……」
魔王「それは直接聞いてみることだ。この城のホールに彼らを呼んでいる」
参謀「……聞かなくてもわかることだ。返却せよ。さもなくばこの廃墟に攻撃を仕掛ける」
魔王「元々貴様らのものだろう。魔族の国など認めてもいないのだから」
参謀「ちっ……賢しいヤツが……」
魔王「亡命自体、彼らの意志によるものだ。貴様の王は、民に自らの国を決めさせる度量さえ持ち合わせていないのか」
85: 以下、\(^o^)/でVIPがお送りします 2014/12/10 07:08:45.94 ID:+oNpqfm+0.net 参謀「……我が国の労働力を奪っただけでは飽きたらず、我が王まで侮辱するか」魔王「その発言は、いや、亡命したという事実を認めるということでいいのか?貴様」
参謀「……いや、口が滑った。亡命したのではない」
魔王「ならば返却もなにもなかろう。貴様の国の住民が、短期間かつ大量に旅行に出たというだけのことではないか」
参謀「…………貴様」
魔王「気付いたか。遅いぞ下郎。どちらにしても、私に話をするのは筋違いなのだ。わかったら早く民に話を聞いてこい」
参謀「くっ……」
86: 以下、\(^o^)/でVIPがお送りします 2014/12/10 07:12:44.12 ID:+oNpqfm+0.net 勇者「どういうことだ?」魔王「奴は亡命という形を取ったと主張したな」
勇者「ああ」
魔王「亡命するには、国が最低でも2つなければならない。亡命先と、元いた国だ」
勇者「ああ!亡命と認めてしまったら、魔族の国の存在を公式に認めることになる」
魔王「ああ。彼らが亡命と認めたなら、私も王として彼らを守ったが、今回は彼ら自身の意志で自らを守ってもらう」
勇者「策って言うより屁理屈だな」
魔王「守ると言っておきながら情けないが、平和に解決をするならばこういう手法が一番だ……」
87: 以下、\(^o^)/でVIPがお送りします 2014/12/10 07:17:18.19 ID:+oNpqfm+0.net 部隊長「いえ。私達はここで生きていきます」女A「私も、この国で生きていたい」
亡命者A「あの窮屈な暮らしはごめんだ」
亡命者B「俺もここで暮らす」
亡命者C「……亡命ってそういうことだから」
参謀「みなさん。この場所は国ではありません。しかし我が国の外なのです。受け入れ先のない亡命などお止めなさい」
部隊長「ならここは誰も支配していない土地なのですか?」
参謀「ええ。そうなります」
部隊長「なら、私達はここに国を興します」
89: 以下、\(^o^)/でVIPがお送りします 2014/12/10 07:23:25.97 ID:+oNpqfm+0.net 参謀「え?」部隊長「だってこの廃墟はあなたの国のものではない。そしてここは国ではない」
女A「どの国もこの土地を所有してないってこと?」
部隊長「そうなる」
参謀「いやいやいや……国って……あなた方ねぇ、そんなこと簡単にできませんよ」
部隊長「亡命だって簡単にできることではありません」
参謀「我が国の1割の民が亡命……じゃない。国を興すなど……。無謀にも程がある。今なら間に合う。帰ってきなさい」
女A「王は誰にしましょうか?」
部隊長「……あの人だ。あの人以外に考えつかない」
女A「奇遇ですね。私もです」
参謀「…………」
92: 以下、\(^o^)/でVIPがお送りします 2014/12/10 07:28:58.40 ID:+oNpqfm+0.net 人の王「貴様っ!それでのこのこ帰ってきたのか!」参謀「申し訳ございません、王」
人の王「無能めが。あの魔族め……」
参謀「王。申し上げたいことがございます」
人の王「なんだ、無能」
参謀「魔族の王を自称する奴を暗殺致しましょう」
人の王「できるならやっている」
参謀「いえ、今だからできる手段があるのです」
人の王